オジギビト集会所本部長室R

路上観察サイト「オジギビト集会所」本部長のブログ

【オジギビト】饒舌な人々・犬を連れた人々

 路上観察もある程度の期間やっていると、写真の整理もなかなか一苦労である。最初の頃は写真撮影もフィルムに写す銀塩写真のカメラで行っていたので、そちらの方も引っ張り出して見なければならない時もある。だいたいのものは電子データ化しているが、やはり元のプリント(あるいはネガ)が必要な場合もあったりする。

 今回は、それらの銀塩写真プリントの中から、まず一枚紹介したいと思う。(2000年くらいまでは銀塩写真で記録していたのか……と少々感慨深く思ったりもする)

兵庫県神戸市の饒舌な人(2000年5月)

 長谷工コミュニティの、直立不動オジギビトである。この人自身は、色鉛筆で描いたかのような独特の感じで、何というか「アーティスティック」(?)である。

 それはまあ良しとして、注目したいのは彼の発していたメッセージである。オジギ看板としては異例とも言える長文で、子供を持つ父母へのお願いをしていた。これを全て読んで理解するためには、通行しながらというのは少々難しいかもしれない(字も小さめだし)。

 この過剰気味な分量で示されたお願いは、通行人をいったん立ち止まらせて、しっかりと最後まで読ませるためのある種の「戦略」なのかもしれない。だとすればなかなか頭がいい。

 

 こうした「長文戦略」は、工事現場看板としては一般的ではない様子だが、他に例がないわけではない。下の写真は、北海道釧路市で確認された例である。

北海道釧路市黒金町の犬連れの人(2008年11月)

 この人は、全国でお馴染みのベテランオジギビトである。オジギビトに興味の無い人でも、彼の顔を知っている人は多いのではなかろうか。内輪型の警告でも大活躍の彼だが、直立不動姿勢でお願いする時は、多くの場合このように犬を連れている。

 

 ついでなので(?)、彼のちょっとしたバリエーション展開を紹介しておきたい。まず彼の最も典型的な直立不動オジギ看板である。

京都府京都市南区の彼と犬(2012年3月)

 鮮やかな緑色のバックグラウンドが印象的である。むしろこの「緑色」の方が、彼や犬よりも強く印象に残っている人も多いだろう。

富山県富山市富山駅前の彼と犬(2011年2月)

 彼の看板にしてはちょっと珍しいかもしれない、黄色&白バックグラウンドである。犬はほぼ同じであるが(ごく一部のディテールの省略あり)、オジギビトの方にちょっとした変化が見られる。ぱっと見で分かるのは、顔の輪郭のふっくらさ加減と、鼻の形である。この鼻の形が経年変化(=彼の加齢)によるものなのかは今ひとつはっきりしないが、ある時期からこうなったというよりは、何となく彼の出所(メーカー)のデザイナーの「気まぐれ」に近いような気がする。

北海道札幌市中央区の彼と犬(2007年10月)

 2007年の札幌の現場での彼は、2011年富山市の彼と同じ鼻の形である。まあ、看板は破損したりしない限りは、結構長く使い続けられるものなので、正確にこの変化を時系列順に追うことはちょっと難しいかもしれない。相変わらず犬を連れているのは変わりない。

 と思ったら、彼単独で現場に立つ例もあった。2021年9月、釧路市内の例である。幼稚園の改築現場ということを考慮してか、メッセージも全て仮名書きである。

北海道釧路市武佐の彼(2021年9月)

 何だか切り絵のような輪郭と、太さが一定しない黒線で構成された彼である。口が赤いのが目を惹く。鼻の形も、さらに別な形へと変化している。単色ベタ塗りの彼と対照的に、影と保護帽はグラデーション表現である。これはもしかすると、工務店の方で独自に生み出された彼のクローンかもしれない。だとすると、犬連れでない理由も何となく分かる(不要と見なされたか……)。

 ちなみにこの犬連れのパターン、もうひと組存在する。

高知県高知市帯屋町の別人と同じ犬(2007年9月)

 首から上が全くの別人になっている。彼がさらに年を取るとこんな感じに?と一瞬思ったが、鼻の形があまりに違いすぎるし、やはり全くの別人だろう。しかし犬は同じである。

 犬の表情、特に口の感じが、「こいつ、いつものと違う奴だな……」的戸惑いを感じさせる。しかしこの人、別に超マイナーなわけでもなく、意外と見掛ける人である。犬も、彼のことを第二の相棒と認めて、隣で微笑んでおいてほしいものである。(もしかするとこの犬の元々の相棒はこの人かも??)

 

 ところで一番上の神戸市の例のようなメッセージが、意外なところでも見られたという報告が、関東支部長から寄せられていた。場所はオーストリアのウィーンである。

オーストリア・ウィーン市 新王宮の現場看板
(2009年4月/関東支部長報告)

 リンク(市の中心部を周回する道路)の内側にある新王宮の工事現場で確認された、各種の警告表示である。最も上のものは、一般人に対する進入禁止の呼びかけであろう(見得切り型に分類可能)。顔には唯一、口だけが確認できる。
 その下は保護帽および安全靴着用を促す内輪型である。これらを身につければ「安全」ということで、青い標識である。さらにその下のものは、左から吊り荷注意、足元注意、そして転落注意の内輪型警告である。
 関東支部長によると、右下の赤枠の中の警告は「工事現場には入るな!子供の保護責任は親にある」という意味とのことである。