オジギビト集会所本部長室R

路上観察サイト「オジギビト集会所」本部長のブログ

【京都】草食の群れ & 池のひみつ(再)

 先日はエゾシカの記事を出したわけだが、本部長がかつて10年以上住んでいた京都市も、鹿(ホンシュウジ)が頻繁に出没する所であった。より具体的には左京区と北区の境界に近い所で、山が近い地域だったのだが、あの辺りは鹿のみならず、猿や猪といった野生動物の頻出地帯であった。猿は、道の真ん中に集合して「会議」を開いたりするので、鹿よりも厄介な場合があったりしたものである。

 今回は先日のついで(?)というわけではないが、数少ない「動物シリーズ」の続きとして、旧集会所本部長室で2017年4月に出した記事の写真を、改訂しつつ再度出しておきたい。また、多少強引だが、鹿とのちょっとした繋がりで、京都市内の怪奇スポットの一つとされている「深泥池」(みどろがいけ)に関する話も、併せて再度出しておこうと思う。

草食の群れin京都2017

 2017年4月上旬のある日、夕方に左京区某所をぶらりと歩いていたら、複数の鹿が住宅建設予定地のすぐ傍らで草など食べていた。

本州鹿の集会(2017年4月撮影)

 写真によると、全部で八頭いたようである。「何だお前は」という感じで、こちらをじっと見ているような個体もいた。
 あまり刺激するのも怖いので、そのまま通り過ぎて十数分後にまた来てみたら、竹林の方に戻っていく最中だった。

去りゆく本州鹿(2017年4月撮影)

 以前もこの近辺は、ほぼ暗闇になった頃合いに通りかかったら、闇の中で蠢く複数の影に驚かされた。かすかに浮かび上がるシルエットで、鹿だということはすぐに分かった。暗闇だと怖さ倍増である。
 2016年末の頃だったか、やはりこの近辺を夜中に自転車で通りかかったら、対向車線を真っ直ぐに駆けてくる成体の鹿とすれ違ったこともあった。「怖い!」と思うとともに、「結構カッコイイ!!」とも思ったものである。

 

池のひみつ

京都市北区の深泥池(2017年5月撮影・複数写真の合成)

 上の写真は、京都市内、北区と左京区の境界にある深泥池(みどろがいけ)である(深泥池は北区側)。ご存じの方も結構多いと思うが、この深泥池、ある怪談で全国的にわりと有名なようである。検索するとぞろぞろ出てくるので、興味がおありの方は一つ二つキーワードを入れて検索してみていただきたい。
 概要としては、「近所の病院の患者が池で自殺して、その霊が家に帰ろうとしてタクシーを止めようとする」というものである。

 本部長の(寝る前にちょっと読む本の中での)愛読書の一つである「悪魔・オカルト大全科」(秋田書店・1983年)には既に、この怪談の基本となる話(=上記の概要)が取り上げられている。264ページの「ほんとうにあった怖い話 木原博士の怪奇コーナー」で、本書では「深泥ヶ池」と記載されている。

現在所有している「大全科」シリーズの3冊

 このことからすると、少なくとも既に80年代前半には、この怪談の基本フォーマットが存在したことになる。その後色々と脚色がなされて、例えば「病院を無断で抜け出した精神病院の患者が……」などのディテールが付け加わったのかもしれない。

 

 ちなみに2010年代に入った頃、北区在住の地元民(当時40代前半の女性)に、深泥池に関する怖い話について訊いてみたことがある。この方の話によると、「真夜中に深泥池で笛を吹くと、幽霊が現れる」という噂が、子供の頃(80年代)にあったとのことである。病院も何も関係ない、実にシンプルな話である。非常にシンプルであるため、これが後のディテールが強化される前の、元の話なのでは?という印象を受ける。しかし、既にあった「女性がタクシーに乗って……」という話とはまた別個に、「真夜中の深泥池は暗くて不気味」というイメージだけから、当時の子供らの間で自然発生的に出てきた話という可能性もあるだろう。どちらの話が先に出てきたのか、そこが分かればもう少しはっきりするのだが……。
 その話を聞いた時に思ったのは「やはり使うべき笛は、学校で使うリコーダーとかホイッスルとかではなく、和楽器の横笛なのだろうな」ということであった。やはりそれなりの「形」というものが、この種の話では恐らく必要だろうと思われる(そしてこういう想像が、余計な「脚色」に繋がると……)。幽霊のディテールについても訊いたのだが、ちょっと記憶が定かではない。確か白い着物とか、いかにもスタンダードなものだったと思う。

 

 このように深泥池には怖い話が流布されているわけだが、この近辺を朝昼晩(もちろん深夜も含む)と、わりと頻繁に……というよりは何年間も毎日、朝夕必ず通っていたこともある本部長からすると、その種の超常的な怖いものは一切、無かった。多少、周辺地域より暗い場所があっただけである。(しかし、人によってはもの凄く不気味に感じるのは理解できなくもない)
 むしろ現実的な意味で怖かったのは、深泥池を右に見ながら北に向かって進み、池本体が湿地に変わって道が上り坂になってきたあたりで、歩道がなくなってしまううえに道(車道)自体が大変狭くて曲がりくねったものになる、という状況であった。つまり「交通事故の危険」という意味で、怖い場所だったのである。途中にある病院の横を通り過ぎて、バス停付近まで進むと道幅に余裕ができるので、かなり安心できるのだが……。坂を登り切って、自動車学校の辺りまで来れば、もう完全に大丈夫である。
 坂道の途中にある病院は、深泥池の北側に広がる湿地状の領域に面しており、深泥池を見下ろす位置にある。ここが件の怪談と直接結び付けられているのかどうかは不明だが、明言はされずともそうなっている可能性は、残念ながら幾らかあるものと思われる。
 しかし、この怪談を面白がったり怖がったりしているのは、他地域の人々だけの様子なので、病院の評判および経営には、何ら影響を与えていない模様である。まあ当然であるが。(地元民、特に病院関係者はこの怪談、内心苦笑いとは思うが……)

深泥池の傍の林の中にいた鹿(2009年10月撮影)

 そしてもう一点の恐怖因子は、「野生動物不意の出現」である。上の写真は、実際にこの付近で遭遇した鹿である。これらが突然、林の中から現れれば、夜中はもちろん昼でもびっくりである。車を運転している人ならば、なおさらの恐怖であろう。

 多くの場合は鹿と思われるが、この辺りの状況からして、恐らく猿なども出没していたことだろう。ただ、深泥池周辺では、本部長自身は猿には出会ったことはなかった。しかし出てきても全く不思議はない。

 

 釧路市の鹿と野犬の問題は、未だ進行中の問題である。また、わりと近所の標茶町厚岸町付近で、OSO18なる謎のヒグマが出ているとのことである。こちらも何かのきっかけでこの辺までふらりと……ということも無きにしも非ず(?)なので、なるべく周囲の状況には気をつけたいと思っている。(しかし実際出くわしたら、適切な対応を取れるかどうか)