今回は久々に(?)、現場の人を一人紹介したい。
様々な掲示が、建設現場の覆いの上に掛けられている。この中の一枚から、何者かの視線を感じたような気がしたので、さらに寄ってみた。
「オール電化住宅建築中!」の幕の一番下に、定番メッセージと共に彼はいた。非常に控えめに。
よく見ると、彼の周囲を取り囲むような輪郭が見える。どうやら彼は、元々この幕には含まれておらず、後から追加されたようである。つまり、彼は後からこの位置に「貼り付けられた」ようである。最初からこの幕に含まれていなかったのであれば、このささやかなサイズに収まったことも、ある程度理解できる。これ以上大きいサイズの人は、余白やメッセージなどとのバランスが悪くなるので、彼のサイズが「丁度良い」ということになったのであろう。
仕方ないとは言え、サイズ的にも位置的にも、彼の扱いはちょっと不遇のような気もしないでもない。しかし、その朗らかな笑みは、彼が不遇な状況にも関わらず、自分のすべき事を忘れずに務めをきちんと果たしている証拠であり、まさしくオジギビトの鑑と言えよう。
その後、1年もしないうちに、滋賀県栗東市の建設現場で、彼との再会を果たすことができた。
どこに?と思われたと思う。では、もう少し拡大した写真を。
ロービジというかモノトーン仕様になった彼が、クレーンの陰で静かに微笑んでいた。気のせいか、この現場の彼には、構成自体は左京区の時と全く同じものの、ディテールは各部で僅かな違いが見られる。
その後、10年以上経過したが、彼と再会した記憶がない。実は何度も遭っているのだが、相変わらず存在感をあまり感じさせないために、気付けていなかった可能性もある。路上観察者としてはやや迂闊な気もするのだが、彼のステルス的存在感は、こちらの思った以上に手強いものなのかもしれない。