オジギビト集会所本部長室R

路上観察サイト「オジギビト集会所」本部長のブログ。本ブログではアフィリエイト広告が掲載されています。

【路上観察】手作りの「犬の糞の後始末」掲示

 本集会所ではメインテーマとして工事現場のオジギビト衆を紹介しているが、路上観察の過程では、当然ながら現場オジギ衆以外の、多種多様な路上物件に出会う。
 今回はその中から、「犬の糞は飼い主が後始末しましょう」など、公共の場(道路)を動物の排泄物で汚さないよう注意喚起している掲示・看板について、少々紹介してみたい(ちなみにこの方面も、既に多くの収集家、専門家の方々が活躍している模様)。
 しかしながら、行政や公的な団体が出している掲示・看板は日本全国に遍在し、当然ながら種類も極めて多岐に渡る。そのため、本集会所でこれまでストックされた写真も、なかなかの量になっている。そのため、未だ整理も殆どついていないという体たらくである。

埼玉県越谷市草加市の犬糞看板(2009年5月)

 これら三例は、行政や公的団体による看板である。このような行政や公的団体によるものが、街中の犬糞看板・掲示の殆どを占めている模様である(もちろん、デザインおよび製作もプロの手によるものだろう)。その一方、自分の家の前や庭先などに排泄・放置されることを防ぐために、個人で同様の自作掲示・看板を作る例も少なからずある。これらは、行政や団体によるものよりも、その人の個性や思いが直に出やすいもので、なかなか面白いものである(動物の糞尿被害というところからしても、個々人の「思うところ」が出やすい種類のものかもしれない)。今回はそれらについて、ほんの少しであるが抜き出して紹介してみたい。

 まずはこれ。早速例外のようで恐縮だが、個人ではなく、工事をしている企業の人が作ったと思われるものである。しかし「自作」には違いないということで、何とぞ大目に見ていただければ幸いである。

京都府京都市中京区・工事現場の白い壁上の犬糞掲示(2012年6月)

 犬は恐らく素材集からで、PCを使って作られているため、簡素ながら美しく纏められている掲示である。そしてメッセージも、至ってシンプルで必要十二分、これ以外に何の意志も意図も含まれないものである。つまり自作の掲示としては、「可も無く不可も無く」という感じのものである。行政などのものも、基本的にこうしたシンプルなメッセージのものが大勢を占めている模様である。恐らく、工事の業者の方がこの現場に対応した掲示を作るということで、「個人的な思い」をメッセージや図案に含めるようなことも、殆ど考えに無かったものと思われる。

 しかし、一般家庭などの個人が作って出す掲示や看板には、やはりその人の思いが少なからず入ってくるものである。次の写真は、メッセージ自体は普通だが、ちょっと面白いひと味が加わっているものである。

京都府京都市左京区の動物排泄禁止掲示(2009年9月)

「犬におしっこさせないで!!」という、非常にシンプルな手書きのメッセージである。糞の方は「言わずもがな」ということなのだろう。注目すべきはやはり下のイラストである。犬と猫が、右側の木の幹らしきものに向かって、点線状の小水を放射している。そしてそれらの上には大きなバッテン。メッセージの中には犬だけしか出てこないが、猫も当然ダメだよ!という意思表示でもある。
 メッセージ自体はごくシンプルかつ普通であるが、やはり下の(ちょっと控えめな)犬猫が、この掲示の価値というか、「注目すべきフック的なもの」を強化していると言えよう。

 次の写真は、メッセージに工夫が凝らされたものである。

京都府京都市左京区の犬糞看板(2011年3月)

「ワンワンがウンをするのは当りまえ」、つまり犬も動物なのだから、排泄するのは当然である、ということを上の方で述べている。そして下の方で、「飼主が始末するのもあたりまえ」と、犬の行動とその結果を監督・管理すべき飼い主の負うべき義務について述べている。「犬が排泄するのは当然なのだから、飼い主が責任を持ってその処理を行え」ということを、これら二文で簡潔に示しているわけである。当たり前のことは当たり前にやりなさいというメッセージが、強く感じられる看板である。ちなみにメッセージは上下ともに、五七五で纏められている。

 次のものは、より直接的にお願いしているもので、ある診療所の前に出ていたものである。

京都府京都市左京区の犬糞掲示(2012年6月)

「うんこクリニック」というワードが、なかなかのセンスである。ただ単純に「糞させるな!」、「持って帰れ!」的な命令ではなく、「うちがこんな風に言われるのは恥ずかしいので、どうか何とぞ……」という、ユーモア的雰囲気も感じさせる切り口で、処理をお願いするという巧い工夫がなされている。この懇願的掲示を見て、「何だと!」と怒り出すような飼い主は、まずいないのではなかろうか。

 そしてこれは、鳥取県倉吉市で見掛けた、なかなか詩的な看板。

鳥取県倉吉市の犬糞看板(2009年3月)

「愛犬の糞 いずこへ」とだけ書かれている、シンプルな看板である。その意味するところは何か?としばし考えなくもないが、不思議と言わんとすることはちゃんと分かるような気もする。まあいずれにしても、「愛犬の糞」というこの一言をバーンと示すこと、ただそれだけで、「ここに糞をさせるな」という意思表示には成功しているのではなかろうか。

 最後のものは、怒りが充満しているものである。

京都府京都市北区の犬糞札(2012年4月)

「ココで犬に大小便させている人 見つけ次第警察につき出す」と書かれている。文字がやや退色気味なことからすると、かなり前からこの場に出されている掲示なのであろう。お怒りは実にごもっともで、シンプルかつ直接的な警告になったそのお気持ちは十分に理解できるものである。文字のかすれ具合に、怒りが籠められているかのようである。
 既に目的は達成されたのかもしれないが(=常習犯を警察に突き出した?)、他の悪い飼い主への警告のために、引き続きこの掲示はこの場に留められ、睨みを利かせているのだろう。この写真の撮影から既に10年以上経つが、多分今もこの札が「警察に突き出すぞ!」と、この場を見張っているに違いない。

 行政などの犬糞看板については、そのうち整理して何かの機会に発表していきたいものである。しかしやはり面白いのは、今回紹介したような個人レベルでの掲示・看板の方である。両者ともに、今後も引き続き注目していきたいものである。