現場のオジギ看板の中でも、長いこと使われているものは、退色が進んでしまったものも多く見受けられる。特に、赤色は最も「蒸発」しやすいらしく、下の写真の例などは本当にキレイに赤色だけ消えてしまったと思われる例である。ちなみに分類としては、「モタレ型」となる(「街角のオジギビト」参照)。
拡大してみても、最初からこういうデザインだったのでは?と思わせるような、完全な赤色の消失である。彼がモタれている……というか、かつてモタれていた物体は、まず間違いなく赤枠である。彼の口も赤色だったのだろうが、同じく完全に失われている。
このモタレ人のデザインは2010年代のスタンダードな人ではない感じ、つまり相当なベテランということからして、この看板自体がなかなかの長期間使われていることを推定させるものである(モタレ型自体が、現在ほとんど見られない……ように思う、少なくとも自分が見てきた限りでは)。その割にはこの看板、かなりキレイである。かなり丁寧に扱われてきたのだろうか。実に良いことである。
この人でふと思い出した、ちょっと不思議な例が下の写真。工事現場の看板ではなく、駐車禁止に関する注意喚起看板である。
黄色いランドセルを背負った少年が、斜め奥側に向かって進んでいく様子である。しかし彼の肌の色は……看板と同じく白い色ということなのだろうか。顔には、目と思しき黒い丸二つが浮かぶのみである。この看板は恐らくPTAか学校の手作りと思われるが、彼の肌の色を退色しやすい色で塗ったとはとても思えない(肌を赤で塗ることはまずありえない)。「駐車」という文字は赤で書かれているが、板の痛みの方で剥げてはいるものの、退色で蒸発という感じではない。
するとやはり最初から、彼はこういう感じだったのだろうか。拡大写真では、右脚(素肌露出部)の輪郭と思われる薄い灰色の線が、かすかに見える。顔の輪郭も、よく見ると残っている部分がある。靴底の色が白く塗られているところを見ると、彼の肌は板の色をそのまま利用しつつ、身体の輪郭のみ細い暗色の線で表現したのではないかと思われる。だとすると、輪郭の線の殆どは退色あるいは板の痛みで消失してしまったことになるだろうか。
いずれにしてもこの少年、見事な「透明人間」っぷりである。目だけが光っている感じが、カワイくも不気味で良い。しかし既に9年以上も経過しているので、この透明児童も既に引退しているかもしれない。
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