オジギビト集会所本部長室R

路上観察サイト「オジギビト集会所」本部長のブログ

【現場外オジギビト】やむを得ない事情

 今季の寒波は、道民にとってもなかなかキツいものである。2月に入れば幾らかましな感じになってくれるのでは……と期待せずにはいられない。
 この寒波による雪と氷で車の立ち往生が発生し、長い間車の中でカンヅメになるという厳しい状況も、日本中で発生している模様である。その「車の立ち往生」でふと思い出したのが、今回紹介する例である。(なお当然ながら、他人の車の撮影は、大いに気を遣わねばならない。ただ、今回のものは公道上で、個人を特定する要素も一切ないということでご理解戴ければ大変幸いである……既に干支一回り以上前の過去のものでもあるし……)

京都府京都市左京区の故障車内に貼られた紙(2010年7月)

 撮影は2010年の7月、京都市内である。何か通常と様子が違う車が、道路の隅っこに駐車しているようだ……と思いつつ慎重に(?)近づいてみたら、どうやら故障車のようで、窓の内側にそれを示しつつ陳謝する張り紙が見えた。どうやらこの車、故障で動けなくなってしまい、本来であれば駐車禁止である場所に停めざるを得なくなってしまったようである。

直立不動スタイルでオジギする人

 手描きの直立不動型オジギビトが、帽子を取って頭を下げている。表情はうかがい知れないものの、全力で謝っている雰囲気が全身から感じられるものである。

さらにオジギ角度が深まった人

 さらに深々とオジギをしている人である。帽子を前に差し出し、全力で陳謝している。

土下座する人

 そしてリアウインドウの人は、さらに申し訳ないという気持ちを全力で示すべく、土下座姿勢となっている。
 故障中である事を示し、本来ならば取締りの対象になってしまう事に対して、精一杯の謝罪の意を示す、三人のオジギビト……。一人は地に伏すほどの、最大限度の謝り抜きようである。通常型(?)オジギビトの二人は、ちゃんと帽子を取ってオジギしているのが実に良い。三者でオジギ姿勢の差違を作っているのも、なかなか芸が細かい。
 こうした人々が、このような状況にも現れるという事実は、現場オジギビト衆の活躍の浸透ぶりを示す、何よりの証拠と言える。それに関しては、実に良いことである。この人々を描いた人には、(その点に対して)最大限の賛辞を送りたいと思ったものである。
 ちなみに一週間後になってもこの車は直っておらず、これら三人が全力で頭を下げ続けていた。さらに一週間後に同じ場所に来てみたら、車はいなくなっていた。ちゃんと直ったのかは不明であるが、取り敢えずそこから移動させられたので何よりである。

 現場オジギビト衆にも、手描きの人々は幾らかいる。今回の人々と同様、良い味出しまくりの人もいたりで、小綺麗なばかりの人々が幅を利かせるオジギビト界には、彼らのような人々の復権、帰還を求めたいところである。
 しかしそれはもはや叶えられない願いで、「小綺麗化」の流れは不可逆的なものと諦めてもいる。そんな状況で、手描きオジギ衆に出会った時の喜びは、また格別なものとも言える。(決して小綺麗な人々の価値を貶めるような考えはないのだが……)

 いずれそのうち、それら「手描きの人々」についても紹介するつもりである。「いずれそのうち」ではあるが。