オジギビト集会所の主要な観察対象は、もちろん工事現場オジギビト衆とその仲間たちである。しかしもちろん、「これは……!!」と思うような種々の路上物件にも注目し続けている。
その中でも、本部長が11年近く住んでいた京都市とその周辺地域で特に数多く目にしたのが「飛び出し児童」である。飛び出し児童の発祥は滋賀県とされており、滋賀県から大阪府辺りの地域では、数多くの飛び出し児童看板を見ることができる。西日本(特に前述の地域)ではポピュラーな存在と思われるが、東日本では同様の「人型に切った板を彩色して作成」する形の児童飛出し注意喚起看板ではなく、通常の四角形の看板で「飛出し注意」を示しているものが支配的である。
みうらじゅん氏は、滋賀県で最初に生まれた飛び出し児童「とび太くん」を、新幹線になぞらえて「0系」と名付けたが、今では「とび太くん」と並列的に「0系」と呼ばれている様子である。この0系、始祖的存在であるがゆえに全国的な知名度もそれなりに高いようで、先月(2022年2月)に放送された「有吉の壁」でも、あるお笑いコンビがネタに利用していた。
その0系の型紙というか型板を使って、地域のPTAや町内会などで独自に描いて作った飛び出し児童も、数多く存在する。独自に描くので、全く必然的にそれらには「個性」が発生し、同じ0系のはずなのになかなか賑やかなことになっている地域もあったりする。そうした例に関しては、当集会所発の書物である「飛び出し児童館:0系の児童たち」(Kindle電子書籍)で、本部長の観察成果がまとめられているので、宜しければご覧戴けると幸いである。
前置きが少々長くなったが、地域で独自に作るということは、0系の飛び出し姿勢を堅持しつつも、実際のところ全く「好き勝手」に塗ってしまえるということである。というわけで子供たちに人気の有名キャラも、その題材となるのはある意味、必然的とも言えよう。
上の写真はあの有名な、頭部がアンパンでできている正義のヒーローの、0系姿勢飛び出しの様子である。すぐ近くには通常の「とび太くん」タイプの0系飛び出し児童もいたのだが、この一帯ではこういう人もフツーに混じっていたりで、なかなか油断ならない愉快な(?)地域であった。
これは0系姿勢ではなく、彼としてはごく普通に空を飛ぶ姿勢のものである。全体的に非常に再現性が高く(オリジナルに大変忠実)、支えの支柱も丁寧に塗られている。しかし、飛び出し注意看板としては、「えいやっ」と勢いよく(文字通りに)「飛び」出している感じがあり、果たして児童がそのように路上に出てくるかどうかというと……という点で、些か疑問が残らなくもない。しかしながら、要は「何かが路上に出てくるぞ」ということがドライバーに示すことができれば良いので、やはりこれで良いわけか。
有名キャラが飛び出し児童として活躍している例としては、下の写真のような例もある。
これはまだ、手を挙げてドライバーに「渡りますよ」という姿勢をきちんとアピールしている感があるのだが、次の例はなかなか大変である。
何かよほど嬉しいことがあったような飛び出し姿だが、だからといって車道に出てきてはいけない。とにかく落ち着いてほしいものである。
ちなみに、彼の面倒を見ているネコ型ロボットの看板もあった。
これは車も込みでメッセージを伝える必要があるということで、通常の四角い看板の上に「情景」として事故の様子が描かれるという形である。大変な衝撃で撥ね飛ばされている様子である。交通事故にはくれぐれも気をつけたいものである。
ところで最初に、0系のような「飛び出し児童」が東日本ではポピュラーではないと述べたが、進出は思わぬ形で既に始まっていた模様である。
北海道の東部、中標津町の東武サウスヒルズで旗を持つ、樹脂製飛出し注意児童である。無論地域住民の手作りではなく、かなりゴツいというか「塊」感のある、がっしりした製品の注意喚起児童である。もしかすると、あの恵方巻き同様に、関西の文化(と言っても良いだろう)である飛び出し児童が全国に浸透しつつある「最前線」の様子を見ていることになるのだろうか。まあそれはやや大げさだろうだが、もしかすると数年後には、北海道でも普通に、0系や100系、500系などをはじめとする、バリエーション豊かな飛び出し児童が普通に見られることになるのだろうか。今後もこの飛出し注意喚起看板の動向は、注目していきたいと思っている。(まあしばらくは、道東では四角看板が主流だろうが……これまで出会ったそれらの例についてはまた後日)
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